経団連会長職並びに金融審議会・委員職にある住友化学の「四半期・会計が泣いています」

経団連会長職並びに金融審議会・委員職にある住友化学の「四半期・会計が泣いています」
(世界経済改革テーマの一つここにあり・一橋大もノーベル経済学賞頑張って・・)

 

住友化学の四半期決算の結果について信じがたい数字が載っていますので、改めて問題提起したいと思います。

私は、半世紀に亘り決算実務に携わり、旧・中間決算制度の致命的欠陥を指摘し、中間決算制度廃止に関与した関係者の一人として、四半期決算そのものの廃止を主張しております。

 

(1)住友化学の5,3月期の四半期決算結果について

 住友化学の令和5年3月期、四半期決算の実績を、残高ベースでなく、「各四半期独立したものとしての発生ペース」で列挙すると以下の通りです。
1Q売上7741億円・利益699億円、2Q売上7544億円・利益110億円、3Q売上7284億円・利益▲207億円の赤字、4Q売上6382億円・利益▲533億円の赤字、通期売上2兆8952億円・利益69億円となっています。
 要約しますと、1Qのみで699億円の利益を計上しているのに、各四半期黒字・赤字を繰り返し、1年後の期末の利益が突然、1Q699億円の10分の1の69億円に急落しています。そして、各四半期、期末の決算の監査結果は、いずれも、「監査法人の会計監査、監査役の内部統制とも適正」とのことですが、会計学者、上場企業トップの皆様、会計関係者の皆様、どう思われますでしょうか。
 四半期決算制度を導入した目的は、四半期の実績を公開することにより、その後の四半期、期末の業績を予測できるよう投資家等利害関係者に役立て貰うために四半期を導入した筈です。しかしながら四半期決算の目的・ルールに関し以下の疑問があります。
 1Q,2Q黒字なのに、3Q,4Q突然赤字とは、四半期分かれば次の四半期、期末の状況が判断できるとする四半期導入の目的に反しませんか? 1Q2Q黒字ならその後も黒字と思うのではありませんか?投資家はじめ会社自体も赤字など望んでないはずですし、1Qのみで699億円の利益を計上しているのに、一年通期の期末のトータルが1Q699億円の10分の1の69億円の利益とは、一体どういうことでしょうか、1Qのみやり234Qの事業などやらない方ががよいということになりませんか?四半期と期末と何の関係もなく、次の四半期にも期末にも何の役にもたたず、四半期決算など無駄そのものではではありませんか?

(2)併せて直近の6,3月期の四半期決算の結果・内容について

 直近の6,3月期四半決算の内容は以下の通りです。
1Qの売上5631億円・利益▲331億円の赤字、2Q売上6237億円・利益▲431億円の赤字、3Q売上6199億円・利益▲334億円の赤字、4Q売上6400億円・利益▲2020億円の赤字、通期売上2兆4468億円・通期利益▲3118億円の赤字となっています。
 内容を改めて説明すれば、投資家だけでなく、会社自体も望んでもいない見事な連続赤字という結果です。その赤字の内容も1Qから3Qまでの赤字は、1Q平均330億円赤字のほぼ同水準ですが、4Qに至って突然6倍の2020億円の赤字に急増してます。123Qで330億円程度の赤字だから次の4Qも330億円程度の赤字と思ってくださいというのが、四半期制度の主旨ではありませんか? 結果は、330億円の赤字どころか6~7倍の2020億円の赤字です。四半期の数字を提示すれば次の四半期以降の予測ができるとする四半期制度の主旨からして、おかしくありませんか。制度導入目的に反していませんか?

 こんな数字、何百回公表しても、投資家どころか、やっている会社にも何の意味もないのではありませんか。

にもかかわらず、制度で定められており、決算業務をやらざるを得ない。そして、法定監査を受けなければならない。会計監査上も、会計処理は手続基準通り処理していますので「会計処理は適正ですが、投資家の役には立っておりません」「投資家の役には立っていませんが、われわれがやっている会計は適正です」ということになっておりますが、こんな「へんてこりんなこと」いつまで続けていくおつもりでしょうか?
住友化学は日本を代表する会社であり、しかも経団連会長職にある企業ではありませんか、模範を示すべき会社が、投資家のためには役立ちませんが、会計処理は監査手続きに従っているので適正ですなんて、恥ずかしくかっこ悪くないですか?
 経団連が先頭に立ち、導入の目的・主旨に反する四半期決算制度など、旧・中間決算制度と同様、即刻廃止すべきと思いますが如何でしょうか?

 この問題は、世界の会計に関わる問題であり、世界経済のあり方に関わる問題なのです。アメリカを初め世界中困っており、「世界の四半期会計が泣いている」のです。日本の場合、住友化学のような日本を代表する立場の大企業がその恥ずべき苦い体験を教訓とし、会計制度の欠陥を是正し解決に乗り出すべきと考えますが、如何でしょうか?

 昨今、「世界の会計関係者」からノーベル経済学賞候補がでてもおかしくはないとの声が上がっております。現に、私の小論写真等がグーグルの片隅に掲載されておりますが、トランプ、岸田首相も一時見直し論をのべていましたが、一向に前進しません。四半期会計を泣かし続けると、日本のトップ企業の会計関係者や一流の会計学者に先立ち、私ごときど素人が候補を横取りしてしまうことになりますが(笑)、然るべき識者の方が「四半期決算廃止は国益なり」と述べています。住友化学さん,国益のため、世界の会計改革のため頑張っていただけますでしょうか。


 また、前にも触れましたが、「世界の経済改革テーマの一つは会計にあり」ですので、一橋大も、念願のノーベル経済学賞受賞に、頑張っていただきたく思います・・・・・(完)

(添付資料)
5,3期,四半期決算資料
6,3期,四半期決算資料

令和6年8月26日         
会計・経理研究者 伊戸川 匡