粉飾額(世界)ランキング(日本を代表する東芝でさえ粉飾・・・)

これまで、個別企業の破綻・上場廃止等について述べてきたが、世界の「粉飾額のランキング」と罰則等を「10位」まで整理しておきたいと思う。これまで公表されてきた各種データを基本に、整理すると以下のとおり。

会社名 粉飾額 懲役刑 備考
1.ワールドコム(米) 1兆円以上 25年 米国は個人厳罰重視
2.日本長期信用銀行 3,130億円 新生銀行に改称(上場)
3.山一証券 2,700億円 号泣社長が印象的・自主廃業
4.東芝 1,500~2000億円 東芝でさえ粉飾・・・上場維持
5.カネボウ 800~2000億円 監査意見不表明・上場廃止
6.エンロン(米) 1,200億円 24年 米国は個人厳罰重視・後に刑期半減
7.サティヤム(印) 1,200億円前後 ・・・・・・
8.オリンパス 1,200億円前後 経営者高額罰金・上場維持
9.日興コーデアル 189億円 完全子会社化・上場廃止
10.ヤオハン 128億円 会社更生法・上場廃止
参考 ライブドア 53億円 2年6ケ月 虚偽記載・風説の流布・上場廃止

(粉飾額は推定値である。懲役刑は社長以下関係役員の量刑である。ライブドアは、懲役刑が課されている数少ない事例なので、参考まで掲記した)

  1. ランクインしている企業は、マスコミで既に取り上げられているので、見覚えはあるかと思いますが、私のコメントは以下の通り
    • 同じ粉飾事例でも、アメリカの事例にみられる通り、アメリカの粉飾決算に関する罰則は、会社に対するよりも、経営者個人に対する責任追及が厳しく、ワールドコムの場合、懲役刑25年、エンロンの場合24年であり、現職のトップ陣が、仮に60代、70代とすれば、死ぬまでの間、生涯刑務所暮らしという、とてつもなく厳しいもののようである。
    • それに対し、日本の場合、少ない例外的な事例を除き「トップの粉飾の予見性少なし」」として、懲役刑はほとんどないようである。アメリカと異なり、経営者個人に対する責任追及よりは、会社そのものに対する罰金等金銭的処罰が多いように思われる。
    • 日本の場合上記、ライブドアが、懲役刑を受けた数少ない事例の一つである。他社に比べ粉飾額は少ないが、妥協を許さないトップの個性が影響したのか、ルール違反を認めず、2年半の実刑を受けたようである。実刑を受けた後も、粉飾か否かよりも、自己主張を貫けるか否かというきわめて個性優先の行動をされているようである。
      東大を中退しても、ルールに反しても自己の確たる理論優先の、本人にしてみれば、当然と言えば当然の行為を貫いているのだろうと受け取るのみである。
  1. 東芝のケースであるが、日本を代表する会社の「東芝が粉飾かよ!!」さらに言えば、歴代の経団連の会長を続けてきたその東芝が、粉飾かよ・・・・の思いである。
    経団連と言うのは、まさかまさか粉飾奨励連合だったなど、そんなことあるまいが、別の項目でコメントしたが、改めて東芝のトップの発言を紹介したい。(読売新聞が報じた内容を要約 27,7,22)

●当時の西田厚聰社長(早稲田大・政経、東大院・歴史部門卒)

「当四半期の営業利益は184億円の赤字見込みです」とパソコン事業部のトップ下光秀二郎氏が報告したら「こんな数字恥ずかしくて公表できない」と叱責したと報じている。このトップの強烈な損益改善要求で、パソコン部品の押し込み販売を通じた不適正会計が始まったとされている。

●次の佐々木則夫社長(早稲田大・理工卒)

パソコン部品部門に「PC損益を改善せよ。できれば150億円程度やれないか」(9,12) インフラ部門に「引当を入れたら、(部門の営業利益は)ゼロになってしまう」(12,9)と、(引当金を計上するな)と圧力をかけたとされている。

●その次の田中久雄社長(神戸商科大・商経学部卒)

不振のテレビ部門に「一体何年我慢すればいいのか、このままなら全員解雇して全面撤退するしかないではないか(14,6)と圧力をかけたとされている。

トップの言動が、もし不正会計の要因になっているということだとすれば、ゆゆしきことであるが、果たして東芝のトップの方々は、このことを理解していたのでしょうか。

早稲田・政経出身の西田社長、同・理工出身の佐々木社長では、会計分野と専門が異なり、理解不能かと思われるが・・・そして理解していたと思われる神戸商科大出身の田中社長が、もう少し早く登場していればの思いはするが、時すでに遅し、と思われるが・・・・・・

会計・経理に携わる者にしてみると、「こんな数字恥ずかしくて公表などできない、だとか、150億円ほど何とかならないかとか、引当金を計上するなだとか」、まさに粉飾指示そのものであり、とてもまともに聞ける話しではないが、立場を逆にして考えてみてください。TOPの貴方様がもし決算担当責任者だったら、トップの言う通り粉飾決算をやりたいと思いますか。そんなことをして、監査が通ると思いますか。法律に違反すればアメリカなら、程度にもよりますが、懲役25年ですよ。それでも赤字じゃ恥ずかしいから、不正経理やりますか、それとも、ライブドアのように、自らの意思で服役しますか。

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