「四半期会計制度に対する金融審議会委員・18名への反対意見」
(会計士も会計も泣いています)
金融審議会・作業部会 委員各位様
岸田前首相が掲げた「短期主義を助長するからとする四半期開示の見直し」について、令和4年2月18日の金融審議会作業部会では、短期主義を助長していないとの趣旨の発言が相次ぎ、まだ不要論が出るに至っていないし、四半期制度廃止に賛成する委員はゼロだった。とのことである。
廃止意見ゼロの審議会作業部会委員(18名)の皆様の意見(●印)と、これら意見に対する「私の反対意見」(○印)を以下の通り申し述べます。
1.井口譲二 ニッセイセットマネジメント・チーフコーポレートガバナンス・オフィサ-(執行役員統括部長)(阪大・経卒)
●資本市場のプラクティスとして浸透していることから存続すべきだ。廃止ではなく効率化で議論すべきだ
○①会計慣習として浸透しているから存続すべだとの主張ですが、慣習だから正しいとは限りません。存続すべき理由にはなりません。
〇②廃止でなく効率化で議論すべきであると主張されていますが、効率化など何の関係もありません。四半期の内容そのものが、会計原則、制度の主旨に違反しているので即刻廃止すべきなのです。
2.近江静子 Jモルガン・アセットメント・インベストメント・スチュワードシップ統括責任者エグゼクテイブディレクター(ICU 文化卒)
●四半期開示イコール、ショートターミズムではない
●決算短信と四半期報告の一本化に賛成
○①四半期開示は短期主義ではないと主張されていますが、本来最低1年単位の長期で考えるべき経営、決算をたったの3ケ月の短期単位で年度と同じルールで年4回も決算を行うのですから、短期経営決算に決まっているではないですか。
○②1Qの2倍が2Q(中間)の利益、3倍が3Qの利益、4倍が4Q(期末)の利益ではないのですよ。四半期、赤字、黒字、赤字、黒字ばらばらなのですよ。上記に関して言えば、そんなこともわからず、何が正しい、慣習ですか。悪の慣習を永久に続けるつもりですか。
3.三瓶祐喜 アストナリンク・アドバイザー・代表(早大・理工卒)
●企業のガイダンスの仕方の再考が必要
●半期報告のみでは投資家から質問がきて不用意に答えるとインサイダーになる
〇①半期報告のみでは投資家からの質問に対し不用意に答えればインサイダーになるとの主張ですが、いつの四半期であろうが、「不用意な回答をしなければよいのです」それだけのことです。
〇②開示の回数など何の関係もありません。意味ない役に立たない情報毎日開示しても何の意味もありません。
●投資家が情報収集したいときに日本企業が黙っていると日本の地盤沈下がおきる
〇①質問があったら適切に答えればよいだけのことで、四半期開示があるかないかなど企業にも、日本国にも何の関係ありません。
〇②四半期だから答えられる、四半期でないから黙っているなど意味不明です。四半期であろうがなかろうが、答えるべきをこたえる。それだけのことです。
〇③日本が地盤沈下するとありますが、ヨーロッパ(イギリス、フランス、ドイツ)は、10年前に四半期開示法律で禁止で、開示するか否かは任意です。
4.永沢裕美子 フォスター・フォーラム(良質な金融商品を育てる会)世話人(東 大・教養卒)
●四半期開示をしなくていいようになるように伝わってきた時には不安を感じた。見直すという表現ではなくて効率化していくという表現で進めていくべきだ
〇①四半期不要論を耳にしたとき不安を感じたとありますが、会計、経営の基本も理解できていないのに、何の根拠もなく、四半期決算は是、四半期不要論は悪、との前提に立っている経営者の意見などまともに聞いてると将来恥かき困ったことになりますよ。
〇②ヨーロッパ先進国は10年前にとっくに四半期廃止です。ご存知ないのですか。
5.黒沼悦郎 早稲田大学大学院法務研究科教授(東大・法卒)
●非財務情報は財務情報を代替するものではなく、非財務情報の充実は、財務情報を後退させる理由にならない
●四半期は法定開示として維持すべきだ。短期主義を助長しているというのは誤解に過ぎない
〇①四半期制は短期主義を助長しているというのは誤解である、と断定し、四半期は法定開示として維持すべきと主張していますが、このような主張はもうおやめになるべきです。
〇②理由は、四半期制は短期主義を助長しているからです。助長していないと考えるのは、貴方に会計、経営知識がないからです。最低限の会計知識を身につければ、子どもでもわかることです。これまで1年に一回の決算であったものを、年4回の短い四半期に短縮したのですから、短期経営そのものではありませんか。
6.田代桂子 大和証券グループ本社・取締役兼執行役副社長(海外担当兼担当) (早大・政経卒)
●経済同友会の経営者に聞いたなかで、四半期開示により(経営が)短期的になると言った経営者は一人もいない。経営者がそんなことを言っていると思われるのも問題
〇①経済同友会の経営者に聞いたなかで、四半期開示により経営が短期的になると言った経営者は1人も居ない。とのこと、メンバ-なら四半期会計のことならならなんでも知っているとの認識のようですが、それは誤解かと思います。
〇②同友会の役員のかたを拝見いたしますと、理事18名のうち、非上場企業の代表者等が8名、上場会社代表者等が10名となっていますが、非上場会社8名の方は上場していないのですから、四半期決算の必要もなく、ルールに従う必要もなく、理念、手続き等実務は知らないと思います。サントリーホールデイングス取締役会長の新浪剛史氏が同友会の代表理事を務めているようですが、サントリーは上場していませんので四半期決算の対象外の会社で、会計士の法的監査も受ける必要もないし、四半期制とは無関係の方と思います。無関係の方があーだこーだ言ってるとすればそれは無責任で聞いても意味ないと思います。
また、新浪氏がかって系列のローソンで、業績を大躍進させたとされているようですが、しかし最後のとどのつまりで、ローソンは上場廃止ではないですか。上場廃止になるようでは、四半期対応など無理であり、こんな方々の意見聞かない方がよろしいのではありませんか。
〇③そのほか一部上場会社の代表の方が理事をされていますが、上場会社の会計、決算のことなど実務のことなど知ることなどありえません。何故なら上場会社でハンコ押すのが社長のメーンの仕事だからです。簿記会計利益の出し方も知らない人に会計決算の仕事が理解出来るはずもないのです。
〇④ちなみに、同友会の中に大手企業の帝人がメンバーになっていますが、帝人の四半期決算の実態を紹介しておきます。
帝人は1Q~4Qまでの四半期の売上が2550億円台の一定水準なのに、利益は1Qが44億円の黒字、2Qが578億円の赤字転落、3Qでまた1043億円の黒字、4Qで226億円の赤字転落の黒字赤字ばらばらの決算で、四半期間何の関係もありません。こんな次の見通しに何の役にも立たないばらばらの四半期決算などやるだけ無駄で、必要もありません。
〇⑤それよりもなによりも、他社のことより、貴方が所属する大和証券の7,3月期の四半期の実態をお知らせいたしましよう。
貴社の売上は3300億円前後でほほ一定水準なのに、利益は1Qが239億円、2Qが537億円、3Qが466億円、4Qが299億円と落差があります。
特に4Qの売上が3Qの売上より88億円も増えているのに、4Qの利益が、3Qの利益より166億円も減少しています。売上が増えているのに、利益がその倍額も減るというのはどこかおかしくありませんか。これでは売上増やす意味ないではありませんか。売上が増えれば利益が増えるとする会計原則に違反していませんか。簿記会計の知識もない早稲田の政経卒の貴方には無理かもしれませんが、他社のこと言う前に自分の会社の不自然な結果から何かを学んだらいかがですか。
〇⑥ヨーロッパの先進国(イギリス、フランス、ドイッ)は、四半期は短期主義を助長するとして、10年前にとっくに廃止、禁止なのです。
7.清原健 弁護士 (東大・法卒)
●複数の開示制度への負担は高い、合理性のある見直しを
〇①複数の開示制度の負担は高い、と指摘していますが、内容のよしあしは別にして当然のご指摘かと思います。
8.佐々木啓吾 住友化学常務執行役員
●決算短信と四半期報告の併存を見直し、一本化には賛成。住友化学の決算期は1990年代半ばまでは12月期だったが、同業他社との比較可能性や、国の統計との分析しやすいように変えた
〇①決算短信と四半期報告の併存を見直し、一本化には賛成とのことですが、形式的なことであり当然の主張です。
〇②それよりも、貴社の四半期決算の実態について明白にしておくと以下の通りです。
直近の7,3月期の四半期の状況として、化学界のトップの住友化学の四半期の売上は、ほぼ一定し上昇しているのに、利益は1Qが243億円の黒字であったが、2Qで突然309億円の赤字を計上、更に4Qの売上が3Qの売上より380億円も増えているのに、利益は3Qより251億円も減っているのです。黒字、赤字ばらばらであり、しかも売上げが増えているのに、利益が減るなど、おかしくありませんか、売上増やす意味ないのではありませんか。
〇③併せて前期6,3月期について触れると、6,3期の四半期の売上はそれなりに一定水準なのに、1Q 331億円の赤字2Q431億円の赤字、3Q334億円の赤字、4Q2020億円の赤字、通期で3118億円の赤字で、各四半期の業績は見事な連続赤字です。売上と利益、各四半期の業績何の関係もない見事な連続赤字ですが、これが日本を代表する経団連会長を努める企業の実態なのです。こんな連続赤字の情報、会社自身、投資家のためにも国家のためにも、何の役にも立ちません。即刻廃止すべきではありませんか。
9.藤村武宏 三菱商事サステナビリティ・CSR部長(東北大・法卒)
●四半期報告の情報にどれくらい意味があるのか疑問。短信と報告書は重複が多く改善が望まれる
〇①情報の内容に疑問ありとされているのか、形式に問題ありとされているのか、定かではありませんが、四半期そのものへの疑問でしたら、全くその通りで、上記住友化学の実態でご判断いただきたいと思います。
10.上柳敏郎 弁護士 (東大・法卒)
●適時開示は早期警戒情報として極めて大きい。金商法の法定開示は維持すべきだ
●短信と報告書の相互引用、レビュウの合理化はありうる
●金商法で国家として保証する形で企業の状況を明らかにすることは、我が国市場への海外からの信頼を確保するため重要な制度
〇①適時開示は早期警戒情報として極めて大きく、金商法の法定開示は維持すべきだとのことであるが、何を早期警戒できるというのでしょうか。四半期決算は、独立した決算期間であり、黒字赤字の繰り返し、赤字黒字の繰り返しで四半期互いに何の関係もありません。各四半期独立しているのに、何を警戒せよというのですか。1Qの2倍が2Q(中間)の利益、3倍が3Qの利益、4倍が4Q(期末)の利益ではないのです。
〇②四半期は、年度決算と同様四半期それぞれが独立しており、黒字、赤字ばらばらで当然ではありませんか、なにを警戒してどうしろというのでしょうか。
11.松元暢子 学習院大学法学部教授(東大・法卒)
●四半期報告書は、必要だから法制化されており、やる必要がなくなった状況になったわけではない。簡素化・廃止には十分な根拠が必要。ショートターミズムが根拠になっているかは、少なくとも現時点で助長することになっている学術研究もでてない。
ショートターミズム懸念で半期報告書を廃止するのであれば、短信とまとめてやらなければ意味がない
〇①四半期報告書は、必要だから法制化されており、やる必要がなくなった状況になったわけではない。とのことですが、はじめからやる必要がないものを法制化したのであるから、即刻廃止すべきであるが私の意見です。
〇②やる必要がない根拠、理由は、四半期は、会社自身のため、投資家、利害関係者、国家にとっても不要、無駄なものであるからです。具体的根拠は私のHPデータの通りですので、ご覧ください。
12.熊谷五郎 みずほ証券グローバル戦略部産官学連携室上級研究員(日本証券アナリスト協会・企業会計部長)(慶大・経卒)
●アナリスト協会は、四半期開示そのものをやめるのは反対で一致。四半期報告書を残してほしいという意見もある。開示内容については、財務諸表フルセット求めなくていいという考え方もある
〇①アナリスト協会は、四半期開示そのものをやめるのは反対で一致。とのことですが、反対するのはそろそろやめて、廃止中止に転換すべきかと思います。
〇②理由は四半期決算など、黒字赤字ばらばらの意味不明、四半期どうし何の関係もなく、やっている会社自身にも、投資家、利害関係者、国家にも何の役にも立たず、無駄な制度だからです。その根拠は、上記日本を代表する住友化学の四半期決算の実態の通りだからです。詳細知りたければ、私のHPをご覧ください。
13.中野貴之 法政大学キャリアデザイン学部教授 (法大・経卒)
●公認会計士のレビューは大きな意味がある。四半期報告制度は維持すべきだが、有効で効率的な制度に再構築してより良い制度に
〇①公認会計士のレビューは大きな意味がある。とのご意見ですが、全く逆で何の意味もありません。会計士が監査であれレビュウであれ、不正会計、粉飾決算であれ、「会計手続きさえ会計原則の手続に従っていれば」内容などどうでもよく、「適正であり、問題なし」なのです。こんなもの何の意味あるのですか。即刻廃止すべきものなのです。
14.上田亮子 日本投資環境研究所主任研究員 (横浜市立大・経卒)
●個人投資家と機関投資家の情報ギャップあり、完全廃止は市場の信頼性、投資家保護の観点から望ましくない
〇①個人投資家と機関投資家の情報ギャップあり、完全廃止は市場の信頼性、投資家の保護の観点から望ましくないとのご意見ですが、全くの正反対で、ギャップがあって、何の役にも立たない危険な四半期情報が個人投資家に伝わらないことこそが、個人投資家を救っているのです。
〇②四半期の赤字黒字ばらばらの何が何だか意味不明の四半期決算など、即刻廃止すべきなのです。ヨーロッパの先進国はとっくに廃止、禁止ですよ。トランプ大統領、岸田前首相もなんとかしたい思いながら、無知な専門家の反対にあい、改革が進展しないのです。後進国のアメリカと日本だけがもたもたしているのが分かりませんか。
〇③詳細確認が必要でしたら、判断するに足るデータ等、多くの具体的判断資料を用意いたしておりますので、私のHPをご覧ください。
(以下の委員のかたのコメント表示はありませんので、私からのコメントもありません)
15.神田秀樹 座長 学習院大学大学院法務研究科 教授 (東大・法卒)
16.神作裕之 東京大学大学院法学政治学研究科 教授 (東大・法卒)
17.小林いずみ ANAホールデングス株式会社 社外取締役 (成蹊大・文卒)
18.高村ゆかり 東京大学未来ビジョン研究センター 教授
以上まとめとして、連続赤字であろうが、黒字赤字ばらばらであろうが、それが投資家等にとって役立とうが立たなかろうが、不正会計であろうが、粉飾であろうが、「四半期決算で定めている手続き」に準じていれば、監査であろうが、レビュウであろうが、会計士の評価・意見は「適正」「問題なし」「指摘事項なし」なのです。心ある会計士は監査不能に陥ち入り、会計士も、会計も泣いています。
専門委員の皆様、お手伝いさせていただきますが、何とかしませんか?
令和7年8月吉日
会計・経理研究者 伊戸川 匡