上場企業の「管理会計」あれこれについて

新日本法規財団奨励賞 優秀論文受賞者
 公認会計士 高田 直芳 様    
 数年前に遡ることではありますが、難関の第4回(平成26年度)新日本法規財団奨励賞受賞おめでとうございます。
 この度、インターネット上で貴方様の論文、コラム等記載のHPに偶然出会い、一通り読ませていただく機会がありました。特に、私の長年の課題の一つである企業経営、業績予想に不可欠な「管理会計、固定費分析等に関する内容」を中心に拝見いたし、数式が多くややなじみにくい点はありましたが、核心をつく驚くべき問いかけ、解説文があり、これまでの教科書・解説書等にない極めてユニークな内容であり、会計関係者に大きな衝撃を与えたのではないかとの印象でした。

 管理会計にあまり知識や関心のない会計関係者の方々にしてみれば、ますます何が何だか理解不能になってしまったか、上場企業の役員・会計関係者、会計学者、貴方様以外の公認会計士など多少なりとも知識のある方がたにしてみれば、だからなんだというのか、固定費がマイナスになるとは何だこれ、固定費がマイナスに変化するとは、固定費は変動費ですといってるような支離滅裂ではないか、グラフと%で企業利益をだせるなら、上場企業の経理部長でもCFOでもやり、現実にやってみせよ、それからものをいうべきではないか。とも思われるような内容に思いました。また、貴方様の主張を理解しているのは論文選考委員のごくごく限られた方のみで、会計学会の主流乃至中枢、第一線の方からすれば、何を生意気なことを言っているのかと言われているのは間違いないであろうとも思いました。
 同時に,奨励賞の社会的評価・権威はともかくとして、上記のような批判と評価の入り混じった状況下で、よくぞここまで来られたものと、貴方様と選考委員の方の見識と勇気に敬意を感じたところです。

 私は創業200年を超える上場企業にて、CFOを含め実務責任者として、約半世紀の長きにわたり現実の決算業務に携わってきたものです。半世紀に及ぶ決算業務関与など日本及び世界でも稀有な経験をさせていただいた一人と思っています。
 一方貴方様はどちらかといえば現在の会計制度を維持する立場にある現職の公認会計士でありながら、会計制度の問題点を指摘し、その改革に真剣に取り組んでいられる。私から見て、貴方様には、他の会計人にはない改革への強い思いが感じられ、私と同一の方向を向いているように感じ、筆をとった次第です。
 「管理会計に関する私の基本的考え方」は、「管理会計とは、それを考える人の数だけあり、それをいかに有効に活用するかがポイントである」と位置づけ、貴方様が指摘する数々の瑕疵を私流に乗り越え、企業経営に有効に活用してきた数少ない一人と思っています。
 貴方様の管理会計に関する論文は平成26年度に受賞されたようですが、私はその遡るところ35年ほど前の昭和54年に、管理会計の考え方を論拠とする小論を某機関誌に既に公表済みで、この小論がきっかけで中間決算制度の致命的欠陥が是正された経緯があります。  

 この小諭に加えて、新たな課題として、3年前の平成30年8月に、「上場企業の業績予想と実態・その乖離状況」とする3月決算の上場企業1800社の10年分の分析データを、HPとして公開し「上場企業に、本当に果たして利益予想は可能か否か」を世に問いかけました。

 具体的には、ソニー、日立、パナソニック、トヨタ、新日鉄、三井物産等々日本の超一流企業といえども、その業績予想がいかに当てにならないかを具体的数字をもって示し、そして日本及び世界においても利益予想に関する理論・学問すらなく、企業の現場においても利益予想のノウハウがないことを実例をもって示したものです。これら私のHPの分析内容は日本及び世界初のものですが、日本及び世界の会計力・経理力・経営力を高めるためご活用いただければと広く公開し、今日に至っているところです。

  もし、私の論文HP等をご覧いただければ、貴方様のような問題提起が、未解決の企業会計に関する諸問題を解くカギとなり、貴方様のような苦い経験をされた方こそが、今後の会計の世界をリードすべき先導者として必要であり、望まれていることに、お気づきになるでしょう。貴方様の問題提起が日本のみならず、世界中に広まることが、世界中で困っている多くの企業・会計関係者を救うことになる原動力になるものと信じています。

 とはいえ、同じような苦い経験をしてきた私からみて、「言うは易く、行うは難し」で、改革するにはこれからが大変であり、内容によっては10年から30年の長き期間を要することをも覚悟し、「難しいことを誰にでも理解できるように」望ましき会計制度のため、信念を貫き通していただきたいと思います。

 最後に、貴方様と同じ公認会計士試験委員の方で、信越化学元常務、早稲田大学大学院元教授の金児 昭氏は、会計制度作りに関わる方々には、日本の会計関係者・会計法学者からノーベル賞をもらう方が出てほしいぐらいの日本特有の理念をもって取り組んでいただきたいと思います。と述べています。
 私は既に、後期乃至末期高齢期の世代、同感すること多とするお若い貴方様には是非ノーベル賞受賞を目指し、頑張っていただきたく期待いたしております。
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                         令和3年2月吉日
                         伊戸川 匡